Save the 下北沢

moon-sherbet2005-07-18

あの日からつながる未来を使いきり下北沢は変わってしまう(根岸 絹)


上京して初めて独り暮らしの夜を迎えた街が
今は実家がある街として生涯関わりを持ち続けるであろう街が
じわりじわりと殺されてゆくような気がする。

http://www.stsk.net/

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ひとりで上京したあの日から
記憶を辿れば随分と下北沢も変わってしまっている。

木っ端やトタンで接いだようなヤミ市然とした市場も9割方営業していて
店先を照らすライトの明るさと入り交じる怠惰感が
ある種独特の活気を生んでいた。
まだ無かったマクドナルドやファーストキッチン
その前はどんな感じの何屋さんだったかさえ思い出せないままだ。
みちゆく若者も雰囲気が違って見えるのは
単に私が歳をとったせいだけではないように思う。
それでもあの街には どことなく普遍的で不変な魅力があって
猛烈に好きという訳でもないのになぜか惹かれてしまうところがある。
ゆっくりと少しずつ なにかが変わってゆくのなら
限りない思い出や想い入れも順応してゆけるけれど
切り裂いて貼り付けたような変化は
むしり取られるような痛みを伴うんだろうなぁ……。



今や有名店になってしまったパン屋の
看板商品が生まれた秘話を話してくれた店主や
レトロブームに一役買った雑貨屋の 
飼っている愛犬の名前や癖や好物を教えてくれた店主や
今でも変わらず美味しいパスタが食べられる洋食屋の二代目店主や
その日の気分を見抜いたようにぴたりとはまるカップ
丁寧にドリップした薫り高い珈琲を出してくれる珈琲屋の店主や
…すっかりご無沙汰してしまっている下北を愛しているであろう人達の
笑顔がみたいと しみじみ想う夜です。


シモキタはシモキタとしてそこにある下北沢は変わってしまう